高校時代の実録

毎日を過ごして、感じたことを日記のように文章にしていこうと思います。

4.夕暮れの告白

彼女は以下のように私に話した。

「一つ聞いて欲しいことがあるんだ。部活のことなんだけどいい?」

もちろん聞いた。彼女はこのような形で私を頼ることはほとんどしなかったので少し意外であり嬉しかった。

「もうちょっとでハンドボール部の先輩が引退するの。だから、今の二年と一年でキャプテンを多数決で決めることなったんだけど、みんな酷い。一回目の多数決で私が一番票を多く集めたのに、二番目の子とその仲の良い先輩がもう一度多数決をとり直そうって言い始めたの。絶対おかしい。おかしいよ。きっとその子たちが仕組んだんだと思う。だから、このことを仲の良い先輩に相談したの。そしたら、仕方がないって......もう私、クラブに仲の良い人少ないから絶対負ける。もう私のことを理解してくれる人なんていないのかも.....。これからどうしたらいいと思う?」
私は困惑した。事が思いの外に深刻そうに思えた。泣いてこそはいなかったがとても苦しそうであった。しかし私には良い答えが思い浮かばなかった。これは意外であり、冴えない私にいら立ちを感じた。今日のために積み上げた私の完璧と思われたメソッドが崩れていく音がした。


   中学の頃、私は怠惰な日常を送っていた。勉強に関しては毎日少ない時間ではあるが続けていた。それ以外に関しては全くダメであった。特に運動はクラスでも中の下くらいで私のコンプレックスの一つである。しかし、私はバスケットボール部に入った。理由は特にない。友達に流されたのだろう。馬鹿であった。そんな理由で始めたのだから当然、日々の練習に身が入るはずもなく、ただひたすら怠ける日が続くだけであった。こういう私を彼女は嫌っていたのだと思う。当時の私は改善する気などさらさら無かった。そして中学時代を終えたのであった。学校は家から自転車で10分で、学力も普通の、いたって普通の学校であった。私は肉体的にも精神的にも脆弱であったのだ。どうしてこんな私に、毎日練習に打ち込み肉体的にも精神的にも私の遥か上を行く彼女の気持ちが分かるのだろうか。いや、分かるはずなど無いのである。そもそも、どうして辛い思いをしてまでキャプテンになりたいのか、どうして毎日過酷な練習に励めるのか、告白された時の私には何も分からなかった。自分が醜かった。
こういうわけで、彼女の問いには答えられず、重苦しい雰囲気になってしまった2人は気づけばすっかり日の落ちた神社に着いた。
「ごめんね。難しいこと聞いて。」

彼女は言った。この言葉は私のプライドをかすかにつつくようであったが、純粋な彼女は気づかないだろう。「あ、綺麗!」朱い楼門がライトアップされていた。確かに綺麗で、二人で写真を撮ろうと僕から提案した。彼女は快く承諾し、写真を撮った。先ほどの重苦しい雰囲気は門の外に忘れたのか、その後は割と普通に話す事ができた。本殿にてお賽銭を投げた後、二人は朱い鳥居をくぐり抜け、奥へ進んだ。私は彼女がどんなことを想って鈴緒を振ったのかが少し気になったが、部活のことが大変と聴いたのを思い出し、それ以上推察するのはやめた。続く