高校時代の実録

毎日を過ごして、感じたことを日記のように文章にしていこうと思います。

6.決壊

   京都に行ってから少し日が経った三月十四日、火曜日のことであった。私は朝が得意でなかったため、学校の無い日は正午近くまで布団にくるまっているのが普通であった。その日は十一時頃に目が覚めて、いつもどおり寝ぼけた顔で朝ごはんを食べた。そしていつもどおり、観るわけでもないテレビの電源をつけて携帯を見た。すると彼女からメッセージが届いていた。僕と彼女はいつもどちらから話を始めるというのは無く、割合は五分五分という感じであった。しかしここ最近は私から話しかけることが多く、加えて言うとその会話に違和感を感じ、ある不安を感じさせられていた。そして彼女からのメッセージがさらに私を不安のどん底へと突き落とした。今日会えないか、直接伝えたい。とのことであった。たまたま私はその日、十九時より学校の仲間との食事会があっただけだったので、今からならすぐ行けると返信した。すると十分もせずに、分かった、と返信がきた。相当重要なことであったのだろう。
私は大いに不安の淵へと沈んだ。やはり私のことが欲にまみれた人間であると言うことに悟ったのだろうか。あるいは、あの日家に帰って冷静に考えると私と恋人になるなど馬鹿々々しく感じたのだろうか。そんなことを延々と考えながらも、落ち合う予定の公園に着いてしまった。この頃から私の喉は乾き始め、多少の緊張を覚えていた。そして深刻な表情をした彼女が現れた時、私は努めて笑顔になろうとしたのを覚えている。しかしあまりの悲しみに沈んだ彼女の顔を見れば、やはり私も悲しくなってしまい顔も一緒になって沈んでしまった。彼女は急に呼び出したことを詫びて、話し始めた。

 

   「あれから私はずっと考えていたの、私は私の先輩のことが好きだった。今もそうかもしれない。そして私は〇〇(私の名前)の事は、正直言って恋愛的な意味では好きじゃない。友達としてはほんとに、優しくて、面白くて...、友達としてはほんとに好きなの。でもその好きという感情は〇〇が求めている感情とは違うでしょ...」彼女は泣き出した。嗚咽を漏らしながらも、苦しそうに、懸命に、私が知らぬうちに彼女が一人で向き合っていた物を伝えようとしたのだ。「辛い。わたしは申し訳なくってま...、罪悪感でもういっぱい...、〇〇も嫌でしょ?辛いよね、だから...、だから私は......、」

 

   彼女は確かにそう言った。一瞬である。季節外れの長雨は大水を地へ注ぎ、川の水位をこの数日間で限界まで上げた。そして堤防は決壊したのだ。堤防は少しでも壊れてしまえばもう崩壊を止める事は出来ないという。実際私は彼女を慰めようとも話すのが苦手であったから思うように慰める事は出来なかった。彼女の気持ちを推し量っておくべきであったのだ。そうしておけば、堤防の決壊は防げたのかもしれない。続く